敗戦の記、対局


初手からの指し手

▲76歩△34歩▲24歩△54歩▲25歩△52飛

▲48銀△55歩▲68玉△33角▲58金右△62玉

▲66歩△42銀▲67金△72玉▲78玉△82玉

▲77角△92香▲88玉△91玉▲78玉△82銀

▲98香△64歩▲99玉△53銀▲59銀△71金

▲88銀△62銀▲68銀△54飛(第一図)


 先手を引いた私は幸運を感じていた。ここまでの指し手は、恐らく先生にとっては馴れた道であろう。ここまでおよそ1分程度だったと記憶している。私も負けじとほぼノータイムで返した。

 54飛車は、軽い形に構え捌きを狙うものであろう。居飛車がのんきしていると、35歩から石田流の形に構えられ、先手不満である。


第一図以下の指し手

▲26飛△44飛▲46歩△35歩▲79銀右△34飛

▲45歩△51金▲86角△22角(第二図)


 後手の44飛を受けるために26飛と浮いた。44飛46歩の交換は微妙なところで、入れないのも一局だと思う。先手の45歩は44角を消したもの。その後の先手86角は51金と動かれたので、31の地点を狙ったものである。それをカバーするため、22角とされた。ただし、31角成に15角があるのですぐ厳しいという訳ではない。22角を見て、少しポイントを挙げたのではないかと思っていたが、まったく互角の範囲である。


第三図以下の指し手

▲16歩△74歩▲75歩△73銀左▲74歩△同銀

▲56歩△62金左(第四図)


 端角を牽制しようと突いた16歩は少しぬるかったかもしれない。7筋で一歩手持ちにして、56歩と仕掛けた同歩は同飛で少し居飛車が軽い形だと思う。また取るのは利かされにも見えるので、取りにくかったのだろう。


第四図以下の指し手

▲68角△72金寄▲24歩△同歩▲36歩△同歩

▲35歩△54飛▲36飛(第五図)


 相手の角が22の間に手を作りたく思い、無理気味に仕掛けてしまった。実はここで酷い錯覚があり、54飛車に55歩と取り込み、同飛に24飛と走って優勢と読んでいた。しかし55歩に同角と取られると手うっかりしていた、酷いものである。悟られまいと予定変更の36飛を数秒で指したのを覚えている。形勢は振り飛車がいくらかは良いと思う。


第五図以下の指し手

△65歩▲23歩△33角▲34歩△51角▲55歩

△同飛▲56金△52飛▲55歩(第六図)


 65歩に代えて、56歩なら振り飛車がはっきり良かったようである。以下▲同金△65歩

▲同歩△88角成▲同銀に△66歩が穴熊に噛みついている。

 本譜は先に65歩であったため、角筋が逸れることとなり、少し難しくなったように思う。


第六図以下の指し手

△66歩▲同金△65歩▲56金△76歩▲75歩

△同銀▲65金△84銀▲76飛(第七図)


△66歩から穴熊の上部を抑えにこられたが、76歩に75歩から、歩を取りつつ、相手の銀を後退させ、飛車も軽く出来たことから、形勢の好転を感じた。先手の金が後手の大駒を抑え、捌きにくい格好であるように思う。


第七図以下の指し手

△67歩▲同金△64歩▲54金△65歩▲64歩

△66歩▲同飛△62歩(第八図)


 金を浮かせ中央から捌きを狙い、嫌味に迫ってくるが、歩の枚数も増え、正確に指せば勝てると油断が生まれつつあった。しかし驚かされたのは66歩から62歩の辛抱である。いつかの羽生、豊島戦を思い出させ、粘りのアーティストとも言うべき順であり、対局中でありながら久保先生の顔が脳裏に浮かんだ。本局は後に先生の華麗な穴熊崩しが決まるが、私は先生のこの粘りこそ、先生の勝因であると思う。


第八図以下の指し手

▲56飛△32飛▲36飛△25歩▲43金△35歩

▲同飛△24角(第九図)


  私はこの辺りで、優勢を感じつつも、時間が無くなり焦っていた。そして第九図が痛恨の局面である。対局から数日経つが、寝ても覚めても、飯を食べようと風呂に入ろうと頭から消えない局面である。盤上は32金と飛車をとって居飛車よし、駒得し穴熊の硬さに大きな差は無く、普通に指せば普通に勝つ局面である。


第九図以下の指し手

▲38飛△68角成▲同金△65角(第十図)


 私は愚かにも何を思ったのか、38飛車と引いた、後悔しか無く、もしも待ったがきくならば、という一手である。激指によれば、およそ−2000という大悪手。以下当然に、角を取り、打った局面は振り飛車よし。相穴熊は形勢が離れると逆転しにくいというが、先程までは自分に味方する言葉であったが、こうなっては絶望の一文である。


 以下はダラダラと粘ったが、正確に指され私の堅陣は、いいサンドバッグとなったため、省かせていただく。強い先生や対局相手のクロ先生の方での記事が出るようなので、興味を持っていただける方はそちらを見ていただきたい。


本局の総括であるが、序盤から意地がぶつかり、ジリジリした展開が続いた。居飛車の無理な動きに自然に対応した振り飛車が一時良くなるが、決め手を逃され、居飛車が逆転した。しかしその後の振り飛車の粘り、勝負手が良く、振り飛車が勝利を収めた一局であるように思う。

 自身としては、対局前から、少し火花が散っていたことや、沢山の方に見ていただいていたこと、応援してくださる方がいたことから、どうしても勝ちたい一番であったが、無様な一手でダメにしてしまい残念である。

 

 最後に、画像をいい感じに貼るのよくわからなかったので、載せられていないことを謝りたい。暇で暇で仕方ない、なんて方は並べて頂けると嬉しくて沸騰する。

 また、稚拙な文章にお付き合い頂いたことを感謝したい。情けない棋譜になってしまったが、後からツイッターを見ると、強い、流石、などという言葉もあり、大変嬉しかった。また将棋をお目にかける機会があれば、良い将棋を指すので見ていただけると嬉しく思う。ありがとうございました。クロ先生、また将棋を指しましょう。